慢性透析患者の便秘に対するポリカルボフィルカルシウム(PC)の使用経験 蒼生会高松病院 ○安田美保子 去渡ミエ子 平尾信子 山下順子 川島律子 田川悦子 大貫順一 伊藤博夫 寺尾誠心 透析患者に多く見られる便秘の原因の一つとして食事制限による繊維質の摂取不足があげらます。また下剤のコントロールがうまくいかず、便秘と下痢を繰り返す症例等もありました。ポリカルボフィルCa(以下PC-Ca)は過敏性大腸炎の治療薬剤ですが吸湿剤により腸内の水分を吸収してゲル化させるという部分に着目し、食物繊維の代用としての効果と便秘、下痢への効果をアンケート調査の結果をもとに検討しました。
PC-Caはアクリル酸が重合したポリアクリル酸に架橋構造が入った3次元の網目構造の高分子重合体です。吸湿性、膨潤性に富んだポリカルボフィル(以下PC)では服用時に口中や胃でゲル化してしまうため、服用が困難ですが、PC-Caは膨潤しません。
PC-Caは酸性条件下、つまり胃液では吸水・膨潤しませんが、酸によりCaが脱離してPCになります。PCは中性からアルカリ条件下の腸内で35倍以上の水を吸収してゲル化し、吸水した水を保持する特性を持っています。スライドの(A)の試験管はPC-Ca 1gです。(B)はpH 1.2の溶液を入れたところです。pHが胃液に近い酸性溶液中では膨潤しません。しかし、このときPC-CaのCaが脱離してPCになります。(C)は(B)の脱離したPCをpH6.8の溶液に入れました。この条件下でPCは吸湿、膨潤性を発揮してゲル化します。
PC-CaのCa脱離はpH依存性があり、pH 4.1では95%のCaを脱離しますが、pH 6.1では24%です。Ca脱離したPCはpHの上昇に伴い、吸湿膨潤します。pH4.0では5gですが、pH6.5では35gに膨潤します。
当院で透析を施行している患者に排便についてのアンケート調査を行いました。78名のアンケート結果による排便回数と下剤の使用状況は、下剤を用いない群では排便回数は1日に1回以上が33例、2日に1回が4例、3日以上で1回が5例でした。また下剤を使用した群では1日に1回以上が17例、2日に1回が11例、3日以上で1回が8例でした。以上の中から同意を得た14例にPC-Caを1日2〜3.6gで服用を開始しました。
PC-Ca服用後の排便状況は、排便回数の増加が8例、排便量の増加が9例、便の硬さが硬い、あるいは柔らかいから普通になったが4例、下剤の減少が2例、下剤の増加が2例、腹痛が減少したが3例でした。排便の変化はPC-Ca服用後1日から約1週間で観察されました。対象により、効果が観察されるまでの期間に差があったので、効果が得られない場合は約1週間の観察期間を要すると思われました。 腹痛が減少したと回答した2例では、腹痛の減少により下剤の服用が楽になった。下剤を使用すると下痢になり、やめると便秘になっていたが、安定した排便が可能になったと回答しました。
排便回数が増加したと回答した8例の内訳は、2日に1回だった2例は1日1回に増加しました。3日以上に1回と回答した6例のうち2例は1日1回に、3例は2日に1回、1例は1週間に1回から3日に1回へと増加しました。
下剤併用は9例で、うち2名がPC-Ca服用後、下剤の減少が認められました。
報告されているPC-Caの副作用は非常に少ないが、PC-Caには約20%のCaが含有し胃酸によりCa塩基を脱離して吸湿効果を発揮するため、遊離したCaにより高Ca血症になることが考えられます。そこでPC服用前後の2ヶ月間の血清Caと血清Pの値の変化を観察しました。
尚、対象からはVD3、炭酸Ca服用量に変化はありませんでした。VD3の平均服用量は0.5μg、炭酸Caは5.5g、透析液Ca濃度は2.5mEq/lでした。当院ではPC-Ca使用前後の血清Caと血清Pの上昇は認められませんでした。しかし、透析液Ca濃度やVD3や炭酸Caの使用量等の条件により高Ca血症が発生する可能性は否定できません。
まとめ PC-Caは腸管内で水分を保持し膨潤するため繊維質の摂取不足による排便量の低下を補えると思われます。PC-Ca使用により排便量の増加や排便回数の増加がみられました。 尚、腸管機能の低下による便秘には下剤との併用が望ましいと思われます。PC-Caは便秘と下痢を繰り返す症例にも有効と思われます。PC-CaはCaが胃酸により脱離するので高Ca血症に注意する必要があると記載されていますが血清Caおよび血清Pへの影響は認められませんでした。 さらにPC-Caの効果が十分に得られなかった例については、食事や制酸剤、H2受容体拮抗剤などの影響により、Ca脱離が適切に行われず、薬効が十分に発揮されなかったのではないかと思われます。より効果を得るために、現在、食前の服用を実施、検討中です。 |








