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慢性透析患者の便秘に対する難消化性デキストリンの使用経験

櫻井美保 久松健治 櫻井美保 久松健治 小路千陽 川股夕貴 井めぐみ 近藤清隆 伊藤博夫 寺尾誠心

 

目的

l食物繊維の代用として、高い吸水性により、腸内で膨潤・ゲル化する作用を持つ止瀉薬ポリカルボフィル・Ca(以下PC-Ca)が透析患者の便秘に効果があることを第46,47回の当学会に於いて報告した。
lPC−Caは保険適用等の問題により使用に制限があるため、小麦デンプンから抽出された難消化性デキストリンの摂取による慢性透析患者の便秘への効果を観察した。

 

当院の食事中の食物繊維量(g)

 

平均

HD

5.8 6.4 5.3 5.9 9.8 10.2 7.4 7.3
常食 10.3 9.0 7.6 10.6 11.9 12.7

10.4


10.4

 

l食物繊維の1日必要量は男性20g、女性17g

  (厚労相 日本人の食事摂取基準 )

 

l1日10g以上の不足

 

透析患者に多く見られる便秘の原因の一つとして食事制限による食物繊維の摂取不足があげられます。

表は当院の1週間分の治療食に含まれる食物繊維の量です。常食においても必要量の半分程度しか摂取できませんが、透析食ではK制限のため更に低下しています。

厚労省の示している基準よりも1日10g以上不足しています。

 

ポリカルボフィルCa服用後の排便の変化


排便の回数が増加した


1回の排便の量が増

加した


硬便(軟便)から普通便に変わった


腹痛が減少した


下剤の使用量減少


下剤の使用量増加

9 10 4 2 2 1

 

対象

有り

なし
14 12 2

 

 

「排便の回数が増加した」の回答内容


PC服用後の排便回数

1回以上/1日

1回/2日

1回/3日
1回/2日

3

0 0
1回/3日以上 2 3 1

 

PC-Ca服用1週間後の排便状況は、排便回数の増加が9例、排便量の増加が10例、便の硬さが硬い、あるいは柔らかいから普通になったが4例、腹痛が減少したが2例、下剤の減少が2例、下剤の増加が1例でした。

14例中12例で有効と回答されました。

また、排便回数が増加したと回答した内容は

2日に1回だった3例とも毎日排便があるようになった。

3日以上で1回だった6例は2例が毎日、3例が2日に1回、1例が3日に1回に増加しました。

 

ポリカルボフィルCa使用上の問題点

l保険適用

 過敏性腸症候群の便通異常

 

l副作用

 1.LDH上昇

 2.過敏症、発疹、そう痒感、嘔気、嘔吐、口渇、腹部膨満感、下痢、便秘、腹痛、AST上昇、GOT上昇、ALT上昇、GPT上昇、 γ−GTP上昇、Al−P上昇、浮腫 

 3.白血球減少、腹鳴、総ビリルビン上昇、頭痛、尿潜血陽性、尿蛋白陽性

 4.高カルシウム血症

 

PC-Caは保険適用と副作用の問題により、持続的な服用は問題があると考えられました。

 

難消化性デキストリン標準成分

  製品100g当たり
エネルギー kcal

193

たんぱく質   g
脂  質     g 0.2
糖   質     g 10.8
食物繊維    g 85.0
ナトリウム  mg 2.4

l名称:食物繊維(難消化性デキストリン)

l原材料名:小麦でん粉

小麦でん粉から抽出された難消化性デキストリンを使用して同様のアンケートを採りました。

今回使用した難消化性デキストリン(食物繊維)の成分表です。小麦でん粉から抽出された白色で無味無臭の粉末で、水への溶解性も良いため、調理に添加して食物繊維の補充ができると考えました。

 

食物繊維の性質

l可溶性食物繊維の特徴

   水分保持能力が高い

    腸内をゆっくり通過する

 

l不溶性食物繊維

   水分を吸収してゲル化する

    ゲルが腸を刺激し、腸内を通過する速度が速くなる

 

 

難消化性デキストリン摂取量

l食物繊維の一日必要摂取量(厚労相) 17〜20g
l透析食の一日食物繊維含有量       7〜10g
l透析食に不足している食物繊維量      約10g
l
l難消化性デキストリンの摂取量は

 5gから始めて、排便状況により10gまで増量

 その後は個人で管理 

 

厚労省の示している食物繊維の必要摂取量には7g〜10gの不足があるため、難消化性デキストリンを5gから摂取を始めて、排便状況により10g程度まで、個人の管理により増量しました。

 

難消化性デキストリン摂取後の排便の変化


排便の回数

が増加した


1回の排便の

量が増加した


硬便から普通

便に変わった


腹痛が減少

した


下剤の使用

量減少


下剤の使

用量増加

10 10 5 8 0

 

効果

対象 有り なし 下痢
18 18 0 4

 

「排便の回数が増加した」の回答内容


難消化性デキストリ

ン服用後排便回数

1回以上/1日 1回/2日

1回/3日

1回/2日 10 2 0
1回/3日以上 2 4 0

 

了承を得た18例で難消化性デキストリンの摂取を開始しました。

開始から1週間後の聞き取り調査を複数回答で実施しました。排便の回数増加が6例、量の増加が10例、硬便から普通便に変わったが10例、腹痛の減少が5例、下剤の使用量減少が8例でした。

18例中18例で有効と判定されましたが、下痢が4例で発生し、2例は摂取量の調整で改善、2例は本人の希望により中止しました。

 

病院食に難消化性デキストリンを添加

無添加

 

平均
HD 5.8 6.4

5.3


5.9

9.8 10.2 7.4

7.3

常食 10.3

9.0

7.6

10.6


11.9

12.7 10.4 10.4

 

添加あり

  平均
HD 16.6 16.6 15.5 15.3 16.6 15.3 15.9 16.0
常食 17.1 19.2 17.8 20.0 18.7 17.8 18.9 18.5

 

入院食に難消化性デキストランを添加して、食物繊維量を調整しました。

水溶性なので、ご飯や水分を使う調理時に添加しました。

常食で平均18.5g、透析食で16.0gまで増加できました。

 

l【結果】

  *難消化性デキストリン摂取により,排便量,回数が増加した。

  *下剤の服用量が減少した。

  *過剰摂取により軟便になることがあった.

 
l【結語】

  *慢性透析患者では、K摂取制限等から食物繊維の摂取量

   が低下し、便秘傾向になることがある。

  *難消化性デキストリンは食物デンプンから抽出した食物繊維

   であるため、食品中に添加することで、これらに対処できた。