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中分子量物質除去の試み

−特に蛋白結合型鉄の除去−

(第1報)

 

大貫順一 近藤清隆 遠藤正寿 呉宗明 赤山祝子 松尾信子 徳山いさ子 寺尾誠心

帝京大学溝の口病院 住永雅司

 

目的

 近年人工透析療法の発達により、長期透析患者の社会復帰が可能になった。しかし、現実には貧血に悩まされ、常に多量の輸血を余儀なくされている患者も多い。

 今回我々は、約10年間透析を施行し、その間日常生活維持のため、多量の輸血を余儀なくされ、血清鉄及び貯蔵鉄の上昇が見られ、多量の鉄が臓器沈着したと疑われる患者に対し、メシル酸デフェロキサミンによって過剰鉄の除去を試み、多少の知見を得たので報告する。

 

対象

 昭和48年5月血液透析を導入した31才男性で、49年7月量側腎摘出、同年9月実弟の生体腎移植を行ったが、50年2月血液透析を再開し、51年2月には移植人を摘出し、現在に至っている。移植腎の摘出頃から1ヶ月に約5〜6単位の輸血を繰り返し、昭和56年4月当院に転院する。現在、血液透析は週3回、1回5時間で施行している。

 

方法

 慢性腎不全患者の過剰な鉄は、一般に貯蔵鉄として組織に蓄積される。その貯蔵鉄を薬剤により、透析での除去が可能な分子量物質とした上で、除去を試みた。

 

図−1

 図−1の如く、使用薬剤はヘモクロマトーシスやヘモジデローシス患者の過剰鉄の除去に使われている鉄キレート剤のメシル酸デフェロキサミン(以下DFO)で、このDFOは3価の鉄イオンと結合して、分子量約700のフェリオキサミンBとなり、通常は尿中に排泄される。我々は尿の出ない、この患者のフェリオキサミンBを効率よく除去するために、中分子量域物質の除去能が良いPMMA膜を使用したダイアライザーを選んだ。DFOは透析開始と同時に1バイアル(500mg)を生理的食塩液100mlに溶き、約60分かけ、ゆっくりと点滴静注した。

 

表−1

 検討期間は56年5月から57年11月までの19ヶ月間で、DFOの使用は56年11月からである。

 検討項目は、総蛋白、ヘモグロビン、血清鉄、TIBC、フェリチン、GOT、GPT、LDH、輸血量、皮膚症状などである。

 表−1の如く、血清鉄はDFO使用前は200〜250μg/dlのレベルであったものが、DFOの投与を開始してから一時的に上昇し、約2ヶ月後より300μg/dl前後に低下して安定している。

 TIBCは昭和57年1月以前と2月移行とでレベル差があるが、これは測定法の違いによるもので、前者はRIA法、後者は松原法によるものである。一般の透析患者ではこのような差はなく、この原因は不明である。2月以降12月までTIBCは約330μg/dl前後で比較的安定している。

 脾臓、肝臓、骨髄の貯蔵鉄をよく反映すると言われているフェリチンは、本来ならばDFO使用前からのデータを比較すべきであったが、検査導入が遅れたため57年よりのデータしか検討できなかった。結果はかなりの高い値ながら9000ng/ dlから6500ng/dlへと低下し、8月以降は安定してきている。

 総蛋白、ヘモグロビン共、多少の変動が見られ、56年5月から57年6月の間は総蛋白で7.3g/dlから6.4g/dl、ヘモグロビンで7.0g/dlから6.1g/dlの巾の変動ではあるが、57年7月以降は総蛋白6.5±0.2g/dl、ヘモグロビン6.4±0.2g/dlと低値ながら安定してきている。

 輸血量はDFO開始までは1ヶ月当たり2〜6単位と多量の輸血が必要であったが、57年1月から6月を除き、明らかに減少し、1ヶ月当たり2単位で維持出来ている。

 症状の面からは、DFO開始以降、副作用的症状がしばしば観られた。それは突然の発熱(38〜39℃)から始まり、咳嗽、頭痛、全身の関節痛等、風邪のような症状を呈し、続いて発熱2日目位から、全身皮膚のピリピリ感の出現に伴って、針頭大から、ウズラの卵大の水疱形成が部分的に観られ、手掌、足底のひび割れから、一部葉状落屑を含む落屑へと移行し、約30日間で全身の表層の脱落を認めた。その結果、暗褐色を呈していた皮膚にわずかながら白く皮膚色変化を認めた。以上のような症状が約2ヶ月後に再度観られ、その後軽度の落屑を繰り返している。結果的には暗褐色に近い皮膚の色が、多少日焼けした程度の皮膚色へと視覚的にはかなりの改善が観られた。

 貧血については、輸血回数の減少と共にヘマトクリット値の安定化へと改善が観られた。

 

表−2

 肝機能面からは、今回の検討期間中には突起すべき変化は観られなかった。

 

まとめ

 DFOとPMMA膜の併用により、次の結果が得られた。

1.尿が全く出ない血液透析患者の皮膚、臓器に沈着しているであろう過剰鉄も、ある程度除去されたと思われる。

 

2.トランスフェリンからの鉄除去はされない。

 

3.数回の全身的な皮膚落屑の後、皮膚色の明らかな改善が観られた。

 

4.輸血量の減少と共にヘマトクリット値の改善が観られた。

 

 

最後に

 今回、途中経過を第1報として報告したが、今後とも引き続き検討し、再度報告したいと思う。

 なお、ご指導いただきました、帝京大学の中村一路先生、松田重三先生にこの場をお借りしまして、御礼申し上げます。

 

 

昭和58年2月28日(日) 全電通労働会館

第11回 東京透析懇談会