血液再循環型HDFと他法HDFの比較検討

 HDFを行う上での煩雑な処理や高価な機械を使用する事なく、BMG除去のできる血液再循環型HDF(以下R−HDF)を考案し、施行しました。
 同一膜を使用したHDF、Push/Pull、との検査データを比較し、本法の効率を検討しました。

 透析中には、ダイアライザーの膜内部の差圧により、絶えず濾過と逆濾過が起きています。濾過量を増加させるためには血流量とダイアライザーの内部抵抗を上げれば良いのですが、脱血量をむやみに上げることも、ダイアライザーの性質を変えることも困難です。そこで、脱血量を一定のまま、血液の再循環を加える事により、ダイアライザー内の差圧を大きくし、濾過量を上昇するようにしました。

スライド 1(回路図)

 スライドは本法の回路構成です。
 ダイアライザーの前後に再循環回路を加えただけの非常に簡単な構成です。再循環量は再循環用ポンプで任意に設定できます。

スライド 2(ダイアライザー内圧の変化)

 R−HDFにおける再循環量とダイアライザー内差圧の変化をスライドに示します。
 脱血量を200ml/minまで順次上昇させ、さらに再循環量を300ml/minまで順次上昇させました。
 血流量が上がり、さらに再循環がプラスされると、差圧は大きくなります。濾過量も上昇していると考えられます。非除水時には、濾過量と同量の逆濾過も同時に行われています。
 従って、R−HDFではPush/Pull同様に透析液のエンドトキシン濃度を安全な範囲まで下げる必要があります。また、HP膜を使用したHDにおいても、絶えず逆濾過が行われているので、透析液のエンドトキシン処理が必要です。

スライド 3(ET処理)

 当院のエンドトキシン濃度を測定しました。
 エンドトキシンの処理は原水をRO処理し、原液希釈後に紫外線殺菌灯を通過し、コンソールに送られます。コンソールのダイアライザー供給液側にETフィルターを2連で使用し、ダイアライザーに供給しました。
 エンドトキシン濃度はETフィルター通過後で1pg/ml以下になっています。

スライド 5(HDと各種HDF比較)

 最初に透析と各種HDFとのデータを比較しました。
 BMG除去率による比較をしましたが、BMG除去率は同条件の治療を施行しても患者により変動が大きいため、同一患者に同一の膜を使用し、複数の治療法を施行し、比較しました。
 HDFの置換量は1,500ml/h、Push/Pullのピストン速度は16ml×5/minでした、R−HDFの再循環量は200ml/minでした。
 BMG除去率の計算は蛋白濃度による補正を行っています。
 透析のみでも50%以上の除去率が得られましたが、各種HDFを施行することにより、さらに除去率が上昇し、60%以上になりました。
 R−HDFにおいてもBMG除去率が向上しています。 

スライド 6(HDFと他HDFの比較)

 次にHDFとその他のHDFを比較しました。
 R−HDFにおいてもHDFとほぼ同等のBMG除去率が得られました。Push/Pullの除去率も同等でした。
 置換量を2000ml/hに増加したHDFではBMG除去率が向上しました。

スライド 7(BMGの経時的変化)

 スライドはBMG除去率の経時的変化です。
 最初の1時間の除去率が高く、時間がたつにつれて低下しています。
 左から2番目の白抜きのグラフがPush/Pullです。比較的BMG除去率の低下が少なく、Push時に逆洗によるリフレッシュ効果があると思われます。

スライド 8(除去量計算)

 各種HDFのBMG除去量を計算すると最初の1時間に全除去量の60%近くが除去されていることになります。後半での除去量は全除去量の20%でした。
 2時間目以降はHDとHDFの間に除去率の差はあまり見られませんでした。
 HDF前半で効率を上げることと、BMG除去能の経時的劣化の少ない膜を使用することにより、さらにBMG除去の効率が上がると思われます。

スライド 9(HDF+HD混合法)

 5リッターの置換液をHDF治療時間に均等に置換した時と、前半で全量置換し、後半はHDに切り替えた時のBMG除去率です。治療時間全体に均等な処理をしたときより向上しています。
 HDFにおいては同量の置換をするのであれば、前半に大量置換し、後半に置換を止めてしまう方法が高いBMG除去率が得られました。その他の各種HDFにおいても前半の効率を上げると、除去率の上昇につながると思われます。

スライド 10(まとめ)

まとめ
1.透析中のダイアライザー内部では絶えず濾過と逆濾過が起きている。
2.血液の再循環により濾過と逆濾過量が増加する。
3.HP膜使用時は常に逆濾過が発生しているので、透析液のET処理が必要である。
4.R−HDFはHDFやPush/Pullと同等のBMG除去率が得られた。
5.BMGは最初の1時間で、全除去量の60%近く除去される。その後、時間経過とともに除去能の低下が見られた。
6.HDFでは治療時間に均等に液を置換するよりも、同量の置換液を前半で置換し、その後HDに切り替えるとBMG除去率が上昇した。その他、各種HDFにおいても前半の効率を上げると、BMG除去率の上昇につながると思われる。
 β2マイクロ・グロブリン(以下BMG)除去の向上のためHDF療法が行われていますが、治療頻度が増えるにつれ輸液等の煩雑さが問題になってきています。そこで、回路構成、手技ともに非常に簡便な再循環型HDFを考案し、検討しました。

 BMG除去は大きく分けて拡散、吸着、濾過により行われます。拡散速度は分子量の2乗に反比例することから、クレアチニンの約100倍の分子量を持つBMGの場合、その拡散速度はクレアチニンの約1万分の1になります。従って、拡散にプラスになる諸条件があったとしても、その除去量は非常に少ないと思われます。
 非除水時の透析でのBMG除去の多くも吸着と濾過によるものと思われます。

スライド 1(膜圧イメージ)

 透析中のダイアライザーの入り口と出口との間には血流量による圧損失が発生します。 内部圧は、出口圧が最小、入り口圧が最大になります。ダイアライザーの膜性状、形状とも全体に均一と考えると、単位長さ当たりの差圧も均一と考えられます。従って、長さが長くなるにつれて差圧も大きくなります。
 また、この時、透析液は膜の外側を血液と逆方向に流れ、透析液出入り口の間でも、差圧が生じます
 図はダイアライザーにかかる圧力のイメージです。
 青のラインが血液側の差圧です。入り口で圧が高く、出口で低くなります。膜にかかる差圧を表していますので、血液出口を基準値(0)にしています。
赤のラインが透析液側にかかる圧です。透析液平均圧は血液側の平均圧と等しくなります。
 膜中央部で平均圧になり、それより圧の高い部位で濾過、低い部位で逆濾過が行われます。
 黄色のラインが両者の合成圧になります。青の斜線で濾過、赤の斜線で逆濾過が発生します。

スライド 2(濾過計算式)


 しかし、ダイアライザー内の圧測定を血液回路のチャンバーで行うと、出口側ではダイアライザー出口から静脈チャンバーまでの圧損失は非常に少ないので無視できるが、入り口側では動脈チャンバーからダイアライザーポート部間で圧損失があるため、正確な圧測定ができません。そこで、血液流量を増加させた時の透析液の圧変化を測定し、膜内部の圧変化を推測しました。

スライド 3(液圧測定値)

 血流量が上昇すると、透析液圧が上昇します。血液側で同等の圧がかかっているために圧均衡がとられている結果です。

スライド 4(ダイアライザー内圧グラフ)

 血液側も透析液側出入り口での圧損失があるため、お互いの平均圧が均衡する事になります。この差圧により濾過及び逆濾過が生じます。非除水時のBMG除去もこの状態で行われると思われます。

スライド 5(再循環による圧変化のグラフ)

 さらに、ダイアライザー内の差圧を大きくすると、濾過量も増加しますが、ダイアライザーの性質を変えることも、脱血量をむやみに増加させることも困難であるため、脱血量を一定のまま、血液に再循環を加えました。
 血流量の上昇とともにダイアライザー内の差圧は大きくなります。この差圧とUFR,SCによりBMGクリアランスを計算しました。
 血流量が200ml/minの時約25ml/minになります。非除水時のクリアランスに近い値になりました。この事から非除水時のBMG除去の多くは濾過によると思われます。
 


 QB=200ml/minの時の各ダイアライザーの内部圧 [PF(QB=200)](mmHg)
┌─────────┬───────┬───────┬────────┐
│ │ QB=200 │ Ht (%)│ │
├─────────┼───────┼───────┼────────┤
│FB−170P │  72 │ 35 │ │
├─────────┼───────┼───────┼────────┤
│BK−1.6U │ 60 │ 32 │ │
├─────────┼───────┼───────┼────────┤
│BK−1.0U │ 64 │ 30 │ │
├─────────┼───────┼───────┼────────┤
│PS−1.6UW │ 118 │ 30 │ │
├─────────┼───────┼───────┼────────┤
│ │ │ │ │
├─────────┼───────┼───────┼────────┤
│ │ │ │ │
├─────────┼───────┼───────┼────────┤












濾過量計算


 :最大圧(ダイアライザー入り口部の圧)
PBMin :最小圧(ダイアライザー出口部の圧)
PBd :血液側差圧
PBdAve :血液側平均差圧(ダイアライザー中央部の圧)
PAv :平均差圧(ダイアライザー中央部の圧)
PA :動脈圧
PV :静脈圧
PFMax :濾過最大圧
PBFMax :逆濾過最大圧
PFAv :濾過平均圧
PBFAv :逆濾過平均圧
QB :血液流量
QR :再循環血液流量
QF :濾過量
RDZ :ダイアライザーの内部抵抗

血流による差圧(圧損失)は
PBd = PBMax − PBMin

平均差圧は
PBAv = PBd ÷ 2

平均濾過圧は
PFAve = ( PBMax − PMax ) ÷ 2 = P 

濾過量は
QF
 ダイアライザーによる除水が0の時、内圧はPAvになる。しかし、ダイアライザー内部に圧差があるため、PAvよりも圧が高いと濾過が行われ、圧が低いと逆濾過が行われる。

PFMax =−PBFMax
PFMax =PMax−PAv =PMax÷2
PBFMax=PMin−PAv =−PMax÷2

 ダイアライザー内の濾過と逆濾過は各々膜の半分ずつの面積で行われる。また、その平均圧は

PFAv =PFMax÷2 =PMax÷4
PFBAv=PBFMax÷2 =−PMax÷4

 濾過量は

QF =PFAv×UFR 
   =PMax÷4×UFR (ml/h)

 設定濾過量が決まれば

PMax =QF÷UFR×4 (mmHg)

 設定例
DZ :PS−1.6UW
QF :2000ml/h
UFR :50

PMax =2000÷50×4=160(mmHg)

 2,000ml/hの濾過をするためには、UFR50のダイアライザーを使用したときに、PMaxを160mmHgにする。

PS−1.6UW使用したときの圧(PF)を下表より求め、QBを計算する
QB=Pmax÷PF×200
  =160÷118×200
  =271 (ml/min)

 QB=200ml/minの時の各ダイアライザーの内部圧 [PF(QB=200)](mmHg)
┌─────────┬───────┬───────┬────────┐
│ │ QB=200 │ Ht (%)│ │
├─────────┼───────┼───────┼────────┤
│FB−170P │  72 │ 35 │ │
├─────────┼───────┼───────┼────────┤
│BK−1.6U │ 60 │ 32 │ │
├─────────┼───────┼───────┼────────┤
│BK−1.0U │ 64 │ 30 │ │
├─────────┼───────┼───────┼────────┤
│PS−1.6UW │ 118 │ 30 │ │
├─────────┼───────┼───────┼────────┤
│ │ │ │ │
├─────────┼───────┼───────┼────────┤
│ │ │ │ │
├─────────┼───────┼───────┼────────┤
│ │ │ │ │
└─────────┴───────┴───────┴────────┘




スライド 1










































スライド 2

PBi :血液入口圧 
PBo :血液出口圧 
PDi :透析液入口圧 
PDo :透析液出口圧 
PBd   :血液差圧 
PDd   :透析液差圧 
PT   :合成差圧 
PTAve  :平均差圧 
PFave  :濾過平均圧
PBFave :逆濾過平均圧
QF    :濾過量

血液差圧
PBd  = PBi - PBo

透析液圧
PDd  = PDi - PDo

合成差圧、平均差圧
PT   = PBd + PDd
PTAve = PT ÷ 2

平均濾過圧、平均逆濾過圧
PFave  = PTAve ÷ 2
PBFave = PFave

濾過量は
QF = PFave × UFR 
= PT ÷ 4 × UFR

















ダイアライザー内の差圧
PBd  = PBi - PBo
PDd  = PDi - PDo
PT   = PBd + PDd
PAve = PT ÷ 2

濾過と逆濾過量は平均圧を境に同量行われる
PFave = PAve ÷ 2
PBFave = PFave

濾過量は
QF = PFave × UFR 
= PT ÷ 4



スライド 3(液圧測定値)