血液再循環回路を用いたBMG除去の試み
β2マイクロ・グロブリン(以下BMG)除去の向上のためHDF療法が行われていますが、治療頻度が増えるにつれ、輸液等の煩雑さが問題になってきています。そこで、回路構成、手技ともに非常に簡便な再循環型HDFを考案し、検討しました。
BMG除去は大きく分けて拡散、吸着、濾過により行われます。
拡散速度は分子量の平方根に反比例することから、クレアチニンの約100倍の分子量を持つBMGの場合、その拡散速度はクレアチニンの約10分の1になります。しかし、コロイドの拡散速度はさらに遅くなり、そのうえに膜の抵抗がプラスされると、その除去量は非常に少なくなると思われます。
吸着量は膜素材により差がありますが、PMMA膜、PS膜等ではBMG吸着の存在が認められています。
非除水時の透析においては濾過を考慮していない場合もありますが、ダイアライザー内部の圧バランスにより、濾過と逆濾過が発生するため、濾過によるBMG除去を考慮する必要があります。
透析中のダイアライザーの血液入り口と出口との間には血流量による圧損失が発生します。内部圧は、出口圧が最小、入り口圧が最大になります。ダイアライザーの膜性状、形状とも全体に均一と考えると、単位長さ当たりの圧損失も均一と考えられます。従って、長さが長くなるにつれて圧損失も大きくなります。
透析液圧は血液圧に拮抗する形で変化します。また、この時、透析液は膜の外側を血液と逆方向に流れ、透析液出入り口の間でも、圧損失が生じます
スライド 1(ダイアライザー内の圧イメージ)
図は非除水時のダイアライザーにかかる圧力のイメージです。
上のグラフは基線を透析膜と考え、基線から上が濾過圧、下が逆濾過圧になります。血液圧は入り口で圧が高く、出口で低くなります。血液入口圧から血液出口圧を引くと差圧が求められます。圧力は濾過方向に向いています。グリーンのラインPBiからPBoが血液差圧です。出口圧からの差圧を見ていますので、PBoは0になります。従って、平均圧はPBi÷2になります。
透析液圧は血液と逆方向に流れ、差圧は血液側よりも小さく、図のピンクのラインPDiからPDoになります。平均透析液圧は平均血液圧と等しくなり、水分の制御が行われます。圧力は逆濾過方向に向いています。平均透析液圧はPDi+PDoの1/2です。
両者の合成圧が透析膜にかかる圧力です。図の黄色のラインになります。血液入口側で、濾過圧が高く、血液出口側で、逆濾過圧が高くなります。グリーンの三角部分で濾過、ピンクの三角部分で逆濾過が同量行われ、水分の制御がなされています
スライド 2(濾過計算式)
血液圧と透析液圧を測定し、濾過圧を求めます。
血液差圧は、血液入口圧−血液出口圧
透析液差圧は、透析液入口圧−透析液出口圧
合成差圧は、血液差圧+透析液差圧になります。
合成差圧の1/2が濾過、1/2が逆濾過に働きます。
平均濾過圧は濾過圧の1/2、合成差圧の1/4になります。
濾過量は平均濾過圧にUFRを掛けて計算しました。
スライド 3(血液圧)
PS膜を使用したPS-1.6UWを使用し、ダイアライザー内の血流を0から600ml/minまで増加させたときの動静脈チャンバー圧を測定し、動静脈差圧を求めました。
1番上のラインです。
血流の増加とともに血液差圧が上昇します。この差圧とSCから濾過量、クリアランスを計算すると、血流量が200ml/minでクリアランスは25ml/min以上になります。
さらに、ダイアライザー内の差圧を大きくすると、濾過量も増加しますが、ダイアライザーの性質を変えることも、脱血量をむやみに増加させることも困難であるため、脱血量を200ml/min一定のまま、血液に再循環を加えました。ダイアライザー内の血流量の上昇とともに血液差圧も上昇しました。
しかし、ダイアライザー内の圧測定を血液回路のチャンバーで行うと、ダイアライザーの血液出口から静脈チャンバーまでの圧損失は非常に少ないので無視できますが、血液入り口側では動脈チャンバーからダイアライザーポート部間で圧損失があるため、正確な圧測定ができません。そこで、血液流量を増加させた時の透析液の圧変化を測定し、血液圧の変化を推測しました。
スライド 4(クリアランスグラフ)
血流を止めた状態での透析液圧を基準にして、ダイアライザー内の血流量を上げた時の透析液圧の変動を測定しました。静脈チャンバーに圧がかからないように再循環ポンプで血流を上げました。
血流量が上昇すると、血液圧が上昇し、それに伴い、透析液圧が上昇します。
平均透析液圧から平均血液圧を求め、ダイアライザーの差圧を計算しました。
透析液差圧は約15mmHgでした。
血流量の上昇とともにダイアライザー内の差圧は大きくなります。この差圧とUFR,SCによりBMGクリアランスを計算しました。血流量が200ml/minの時約18ml/minになります。計算上では非除水時においても濾過によるBMGクリアランスは、そのダイアライザーのBMGクリアランスの透析1時間値の約5割になります。
PS膜はBMGを吸着量するため、拡散によりも濾過による除去の方が多くなると思われます。
さらに血液再循環を加え、ダイアライザー内血流量を400,600ml/minに増加すると、BMGクリアランスの計算値はそれぞれ30、38ml/minになります。比例的には上昇していませんが、HDFとしての効果は十分に期待できます。
スライド 5(BMG除去率)
同一膜を使用したHD,HDFとBMG除去率を比較しました。HDと比べ除去率は向上しています。置換量1,500ml/hのHDF、ピストン速度16ml×5/minのPush/Pullと同等の除去率が得られました。
非除水時においても濾過が存在し、その量は十分にBMG除去が可能な量であると思われます。
まとめ
1.透析中には血流と透析液流による差圧が発生し、その差圧により、濾過と逆濾過が行われる。
2.血液差圧は、動静脈チャンバーでは正確な測定ができない。
3.非除水時に血流を止めた状態の透析液圧を基準とし、血流を増加させたときの透析液圧の変化により、血液差圧が推測できる。
4.非除水時の濾過量から計算したBMGクリアランスは、そのダイアライザーのBMGクリアランス値の50%近く、BMG除去の大きな比率で濾過が関与していると思われる。
5.血液に再循環を加えると、BMG除去率は向上し、置換量1,500ml/hのHDFと同等であった。
|