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体内プールされたβ2-MGの除去
HDF終了直後に血清β2-マイクログロブリン(以下β2-MG)が急上昇することが知られていますが、その原因はまだ明らかにされていません。前回の本学会において、我々はセルウオッシュによるβ2-MGの細胞内液から血漿への移動を検討しましたが、変化が殆ど見られない事を報告しました。 今回、HDF後の血清β2-MGの変化を観察し、β2-MGの体内プールについて検討しました。また、β2-MG除去能の向上を目的として、HDF前半の2時間だけで8Lの置換をする、短時間置換型HDFの検討を行いました。
スライド(44時間β2-MG)
スライドはHDF開始時から次回HDF時までの血清β2-MGの経時的変化です。HDFには東レ社製ポリスルフォン膜BS-1.6U(以下PS膜)を使用し、液置換は8lにて施行しました。血清β2-MGは治療終了時から急上昇し、1時間経過した時点でHDF終了時より約2倍に上昇しました。その後時間経過とともに上昇率は低下し、5時間経過時より次回治療時までは直線的に増加しました。尚、血清β2-MGはTP補正をしました。
スライド(レギュラー膜のβ2-MG除去率)
レギュラー膜HDでの血清β2-MG変動を観察するために、β2-MG除去を目的としていないテルモ社製CL-C15Nと同じ膜にビタミンEコーティングをほどこし、生体適合性が良いと言われているCL-E15Nを使用したHDでの血清β2-MGの変化です。HD前後の血清β2-MGの変化は殆どありませんでした。HD後1時間の上昇も生体適合性の良否による差も見られませんでした。
スライド(β2-MG除去率と排液中のβ2-MG量)
HDFによるβ2-MG除去量を観察するために、廃液を貯留してβ2-MG量を算出しました。対象患者の体重は45kgで排液中のβ2-MG総量は220mgでした。HDF開始30分で血清β2-MGの除去率は45%、排液中の除去量は全除去量の30%でした。その後もβ2-MGの血清濃度と排液中除去量との間には解離が認められました。
スライド(DZ交換時のβ2-MG変化)
この事からHDF後半に体内プールされたβ2-MGが血漿へ移動している可能性を考え、前半2時間をHDF、後半2時間をレギュラー膜に変更してHDを施行しました。レギュラー膜に切り替えた直後からリバウンドが始まり、ダイアライザー交換後30分で26.2%、2時間で40.5%上昇しました。HDF終了後のリバウンドに近い変化が見られました。
スライド(血清、関節液β2-MG)
血漿、細胞間液以外のβ2-MG濃度を観察するために、関節液の測定をしました。HDF前後において血清値の様な大きな変化は見られませんでした。
スライド(体内β2-MG総量の計算式)
細胞外液中のβ2-MG総量を理想体重の体液分布量と血清β2-MG濃度より計算しました。対象患者の体重は45kg、血清β2-MGは30μg/mlでした。血漿に67mg、細胞間液に134mg、その他43mg、合計約243mgになります。β2-MG除去率が70%の場合には細胞外液から170 mgが除去される事になります。また、関節液β2-MGの低下速度が血漿よりも遅いことから実際にはそれ以下と思われ、廃液中のβ2-MG量220mgには達していません。
スライド(血球内β2-MGとセルウォッシュによるβ2-MG変化)
このスライドは前回の本学会で報告したセルウオッシュ施行時のβ2-MGの変化です。TP補正後の血清β2-MGに変化は見られませんでした。また、赤血球の溶血検体からはβ2-MGは検出されませんでした。
以上、生体適合性がPS膜よりも劣ると言われている再生セルロース膜によるHDではβ2-MGの上昇は見られませんでした。しかし、HDFにより血清β2-MGが低下したときにリバウンドが見られました。この事から、体内プールされたβ2-MGが血漿中へ移動する事がHDF後のリバウンドに関与するものと思われました。そこで、短時間に血清β2-MG濃度を低下させることにより、体内プールされたβ2-MGが効率的に除去できると考え、HDF前半で高速に液置換を行い、血清β2-MGの変化を観察しました。
スライド(短時間置換HDF)
置換速度2l/hで4h計8L置換の通常HDFと置換速度4L/hで前半2時間のみ置換する短時間置換HDFの血清β2-MG変化を比較しました。短時間置換型でHDF1時間の除去率が約20%高く、その後、時間経過と共に両者の除去率の差は縮まり、HDF前後の除去率はほぼ同等でした。
スライド(短時間置換型HDFと通常HDFの排液中のβ2-MG量)
通常HDFと短時間置換型HDF治療時の排液中のβ2-MG濃度変化です。短時間置換型HDFで治療前半のβ2-MG除去量が多く、後半はほぼ同等でした。排液への総除去量は短時間置換型HDFで250mg、通常HDFで220mgでした。β2-MG除去率が同等でも短時間で血清β2-MGを低下させる治療法においてβ2-MG除去量が向上しました。
考察 1.再生セルロース膜とエクセブレン膜ではHD後のβ2-MG変動は少なく、生体適合性による差は見られなかった。 2.HDF終了直前の血清β2-MG変化が少なくなった時点でも排液中にはβ2-MGが除去されていた。 3.セルウォッシュによるβ2-MGの細胞内液からの移動は認められなかった。また、溶血検体からもβ2-MGは検出されなかった。 4.排液中のβ2-MG除去量は血清β2-MG除去率から計算したβ2-MG量を上回っていた。
まとめ 1.HDF後のβ2-MGリバウンドには体内プールからの移動が関与していると思われた。 2.HDF前半で短時間置換を行うHDFは通常HDFと比較し、同置換量でもβ2-MG除去量が向上した。 3.β2-MG除去能の評価にはβ2-MG除去量、β2-MGクリアランス等による検討が必要と思われた。 |