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目的:透析液の酢酸の副作用が報告され、重曹透析液へと移行してきました。しかし、現在も透析液には8mEq/lの酢酸が含まれており、この濃度でも酢酸不耐症とみられる症例が存在します。昨年の本学会において酢酸濃度4mEq/lに調整した低酢酸透析(以後4mEq/L HD)により、これらの対象に効果があったことを報告しました。しかし、酢酸濃度を低下させたことにより、透析液のpHが上昇し、透析機器内へのCa沈着が心配されます。当院において約2年間の4mEq/L HDを経験し、この間の透析機器内への影響を目視により観察しましたので報告します。
酢酸4mEq/L透析原末の混合量
調整後の電解質濃度 (mEq/L)
酢酸濃度8mEq/Lの透析液(以後8mEq/L HD)を使用した透析において酢酸不耐症症状、特に起立性低血圧により帰宅までに時間を要する症例に酢酸濃度3.5mEq/Lの置換液を用いたHF(3.5mEq/L HF)を3ヶ月間施行しました。HF施行直後から起立性の血圧低下は消失し、帰宅までに要する時間が大きく減少しました。 HFの酢酸濃度が透析液よりも低い3.5mEq/Lであるため、酢酸不耐症に対する効果があると考え、透析液の酢酸濃度をHF置換液濃度に近く、作成が容易な4mEq/lに調整し、透析(4mEq/L HD)を施行しました。 酢酸4mEq/L透析液の作成法は透析液用原末に酢酸を除いた粉末成分を同量混合して、2倍の水で溶解しました。実際の使用では、混合量の精度を上げるために、透析液用原末5パックと酢酸以外の粉末成分5パック分を10パック分の水で溶解しました。 酢酸8mEq/Lと酢酸フリーの原末を同量で混合することにより、希釈後の透析液酢酸濃度を4mEq/Lにしました。
酢酸不耐症と思われた症例に8mEq/L HD、3.5mEq/L HF、4mEq/L HD、0mEq/L AFBF、4mEq/L HDと切り替えて施行した時の体重とCTRの経過です。 8mEq/L HD時は透析を終了しても血圧低下のため立ち上がれず、動けるまでに1時間から2時間を要していました。 3.5mEq/L HFに切り替えたところ、たちまち終了時の立ちくらみは消失し、約3ヶ月間で透析後の体重も45.1kgから43.8kgに低下し、CTRは61.4%から57.1%まで低下しました。 その後、4mEq/L HD、0mEq/L AFBF治療に変更してから透析後の体重は44.8kgに上昇し、CTRは58.9%まで上昇しましたが、体調が良好になり、食事管理がルーズになったことが原因と思われました。再度の食事管理で透析後体重は43.6kg、CTRは54.3%にまで低下しました。
透析後の血清酢酸濃度を8mEq/L HDと4mEq/L HDで比較しました。 8mEq/L HDにおいて血圧低下が観測された12症例の血清酢酸濃度を測定しました。また、これらの症例から透析後の血清酢酸濃度が2.0mg/dl以上になった5例で4mEq/L HDによる血清酢酸濃度の測定をしました。透析前の平均は8mEq/L HDで0.16mg/dl、4mEq/L HDで0.18mg/dlと両者に差はありませんでしたが、透析後の平均は8mEq/L HDで3.50mg/dl、4mEq/L HDで0.90mg/dlと4mEq/L HDにより透析後の血清酢酸上昇を抑制することができました。
透析液の酢酸濃度を下げることにより、pHの上昇が懸念されます。またpH上昇に伴い、イオン化カルシウムの低下が危惧されます。 透析液希釈後のpHは8mEq/L HDでは7.28、イオン化カルシウムは2.42mEq/lでした。 4mEq/L HDではpH7.56、イオン化カルシウム2.29mEq/lでした。 酢酸濃度の低下により透析液のpHは0.28上昇し、イオン化カルシウムは0.13mEq/l低下しました。また、透析液を試験管にとり、1時間放置したときのpHは7.56から7.68に上昇し、イオン化カルシウムは2.29mEq/lから2.25mEq/lへ低下しました。 酢酸濃度を4mEq/lに低下させるとpHが上昇し、イオン化カルシウム濃度が低下しますが、1時間放置後においても血清正常レベル内でした。
pHの上昇によりCaの沈着が発生する可能性があるため、コンソールの洗浄は1日おきに酸洗浄を行いました。 酸洗浄にはリンゴ酸系洗浄剤ノンスケールCを濃度0.3%に希釈して使用しました。メーカー推奨は週2回ですが、1回多く洗浄しています。 殺菌洗浄は次亜塩素酸系洗浄剤のエキスパートDを濃度 0.04%に希釈して毎日行いました。これはメーカー推奨通りの使用法です。
写真は同型のコンソールです。左が新品で右が4mEq/L HDを2年間使用したものです。2年間の使用期間にコンソールのパーツおよび配管の交換はありませんでした。 チューブが半透明から白く変色していますが、チューブ内への沈着物はありませんでした。
同じ位置からの拡大写真です。チューブの変色はありますが、沈着物はありませんでした。 当院では2年に1度のオーバーホールを実施していますので、2年間の4mEq/lHDにおいてもコンソールへの影響は少なく、実用上の影響もありませんでした。
まとめ
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