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ダイアライザー内で起こる濾過と逆濾過の簡易的な計算

 

蒼生会高松病院 ○近藤清隆 大貫順一 伊藤博夫 寺尾誠心

 

はじめに

中高分子量物質の除去を目的としてダイアライザーの高性能化が進んでる。それに伴いUFRも上昇しているが、ダイアライザーの内部濾過及び逆濾過の測定は現状に於いては出来ていない。また、その計算値もダイアライザーメーカーからは公表されていない。透析膜のポアサイズが拡大し、UFRも上昇している状況からエンドトキシンの逆濾過は必至である。また、内部濾過量の推測はダイアライザー性能の評価の上でも重要である。そこで、簡単な圧測定と計算によりダイアライザーの内部濾過量を推測した。

 

 

ダイアライザーの圧損測定(図−1) 

 透析液側の圧力は透析液出入り口のカプラーに圧力計を付けて測定します。測定位置の調整はせず、使用条件と同位置にする。

 血液側の圧力測定はダイアライザーの出入り口で直接の測定が出来ません。AVチャンバーでの測定はA側にかかるチャンバーの圧力も測定してしまうため、正確な測定が出来ない。そこで、非除水時には血流による圧損と同等の圧力が透析液にかかる事から、血流変化による透析液圧変化を測定し、血液側の圧損を推測しました。

 

ダイアライザーの血液側圧損測定(図−2)

 非除水時に血流を増加するとダイアライザーの血液側圧損が上昇します。その時、透析液圧も血液圧に拮抗する形で上昇します。そこで、血流量を増加した時の透析液圧変化を測定し、除水ゼロを維持する圧力として血液側の圧損を推測しました。

 血流ゼロの時に透析液出入り口の圧力を測定する。血液側の圧損はゼロですから、透析液の圧力平均はゼロになります。しかし、メーター誤差等もあるので測定した値の平均がゼロになるように補正する。ダイアライザー毎に補正値が異なりますのでメーターを補正するよりは補正値を測定し計算する方が簡単です。

 

図−2のゼロのラインから上が濾過圧、下が逆濾過圧です。グラフ上の3本のラインの内の真ん中のラインが血流を止めたときの透析液圧です。除水をしていませんので、その平均をゼロとします。実測時には静脈圧とメーター誤差を考慮なければならないが、”透析液入り口圧=(透析液入り口測定圧−透析液出口測定圧)÷2”、”透析液出口圧=−透析液入り口圧”で求められる。下のラインが血流を200ml/minにしたときの透析液圧です。”血液入り口圧=透析液出口測定圧−静脈チャンバー圧−補正値”、”血液出口圧=透析液入り口測定圧−静脈チャンバー圧−補正値”、測定した透析液圧から静脈圧と補正値を引いた圧力です。血液側の圧損により静脈圧の上昇以上に透析液圧が上昇しました。上のラインは血流により変化した透析液圧と拮抗する圧力として求めた血液側の圧力です。双方の圧力の平均が等しく、除水ゼロが保たれます。また、血液出口圧は圧損がありませんからゼロになります。

図−4(合成圧)

 膜にかかる圧力が分かれば、その圧力を合成した圧力が膜に対して実質的にかかっている濾過圧と逆濾過圧になります。血液入り口圧と透析液出口圧および血液出口圧と透析液入り口圧を合成して、合成した圧をつなぐラインと基線で出来た3角形が膜にかかっている濾過圧と逆濾過圧になります。膜の半分ずつを使って濾過と逆濾過が行われている形になります。

 

(計算式) 

 x軸をUFRに置き換えますと、合成圧と基線で出来た3角形の面積が濾過量及び逆濾過量になります。x軸の1/2に出来た三角形の面積であるから

 QF:濾過量    QF=(PBi−PDo)×UFR÷4              ・・・式−1

 また、ヘマトクリット値と血流量から血漿流量を求め、血漿流量、濾過量及びSCから濾過によるクリアランスを求めました。

 

QP:血漿流量  QP=(1−Ht)×200   ・・・ 式−2

 

CBMG:β2MGクリアランス  CBMG=(QP−QF)÷QP×200×SC   ・・・ 式−3

 

 

 当院で使用しているアサヒ・メディカル社製APS−150の計算しました。

 非除水時の合成圧の最大値=30 UFR=60 SC=0.9 Ht=35 の条件で計算した内部濾過量は450ml/h、クリアランスは11.7ml/minになりました。

 しかし、UFRは決められた1点の圧力あるいは濾過量で測定されているため、カタログ値が全ての条件で真のUFRであるとは言い切れません。

 

 

 合成圧が 10mmHgずつ上昇したときの変化です。TMPの上昇と共に濾過量が増加し、逆濾過量が減少しています。TMP=30のグラフでは逆濾過量がゼロになっています。

逆濾過がゼロになるポイントは透析液圧が逆濾過圧から濾過圧に変わる圧力になります。

 APS−150のUFRと圧力から計算した逆濾過がゼロになる濾過量は1800ml/hになりました。

図−9(実測と計算のBMGクリアランス)

 β2−MGクリアランスの測定値と濾過クリアランスの計算値から拡散クリアランスを求めました。クリアランスの測定法は非除水時にダイアライザーのA・V両側から同時に採血して計算しました。測定したβ2−MGクリアランスは約75でした。内部濾過量から計算した濾過クリアランス約15を引いたものがDZの拡散および吸着によるクリアランスと思われます。

 

 

[結語]

1.透析液圧の測定と簡単な計算によりダイアライザーの内部濾過量を推測した。

2.血流を変化させたときの透析液圧変化を測定することにより、ダイアライザー血液側の圧損を推測した。

3.ダイアライザーの血液側と透析液側の圧測定により濾過、逆濾過量を計算をした。

4.以上の結果から逆濾過ゼロとする条件の推測が出来た。

5.除水能の高い透析膜では少しの圧変化で濾過量が大きく変化するため、更に高い精度の圧測定が必要と思われた。

6.今回は膜にかかる圧力のみからの計算をしたが、今後、コロイド浸透圧やその他の諸条件を加味して検討する必要がある。

7.ダイアライザーの内部圧、内部濾過量は性能評価のためにも、逆濾過によるエンド・トキシン汚染の対策にも有用なデータだと思われます。今後、カタログ値としてダイアライザー内部圧、自然濾過量等が記載されることを望む。

 

あとがき

ここに示した方法には多くの欠点が含まれています。ただ、その欠点を乗り越えて十分に現場の使用に耐えうるものと確信しております。

欠点(頂いた意見の一部です)

1.ダイアライザーの性能が一定ではない。また膜1本1本の精度にも信頼は置けず、流動抵抗やポア・サイズも違う。その他にもある沢山の基礎データが考慮されていない。

2.計算中にコロイド浸透圧やその他の諸条件が考慮されていない。

3.計算が簡単すぎるし、ダイアライザーの圧力グラフも都合良すぎる。

4.自分の姿は自分では見えないため、冷静に自己批評するのが難しい。従って、もっと冷静に違う側面から見られる方のご意見により、筆者には分からない欠点を修正したいと考えております。

 

ご意見への返事

1.ダイアライザーの性能はかなり安定してきたけれども一定とはいえない。しかし*現場が求めているものはダイアライザー1本1本の個体差や小数点何桁まで求めるという精度ではなく(性能差で一番問題になる除水誤差は除水コントローラが吸収する)、**治療に有用な情報である。しかし当然であるが、精度を求めたり、個体差や安定度を追求する仕事も大切である。また、それらを計算するための***基礎データも手に入らない。
*ダイアライザーの個体差よりも、1週間、1ヶ月の使用結果だと考えています。特にここで問題としている濾過は小分子蛋白の除去に深く関わっており、小分子蛋白の除去が臨床上の結果として反映されるには半年、1年という長期の使用が必要になる。
**濾過や拡散による除去能が分かれば、効率の良い使用方法の検索がしやすくなる。例えばHDFに向いているとか、望むデータを出すための置換量を計算するなど。
***各メーカーにお願いしたが、”分からない”、”社内資料だから出せない”、”ある施設にお願いしているので外部に出せない”等々、ダイアライザーの基礎データを手に入れることはできませんでした。従って拡散や濾過を開発関係や工学関係の方々が使う計算式で求めることはできません。

2.除水量の計算をするのに浸透圧を無視するのは問題である。特にPS膜のようにUFRが50を越えるものでは大きな問題になると思われるが、現在使用されているコンソールの除水コントローラーは定容量のチャンバーやピストンで計測され、コントロールしているので、液圧や浸透圧に関係なく、純粋に容量依存しています。コンソールで測定されている圧力は容量コントロールされた結果としてのデータです。しかも正確ではない。しかし、この表示圧を膜へかかっている圧にシフトできれば、その圧力から自然濾過量(透析中の逆濾過量と対になっている)を計算できる。本文中の"透析液圧の推測"により膜にかかる圧力を推測できる。血液のコロイド浸透圧がいくつであっても、透析液圧がそれに拮抗する圧力です。

3.膜にかかる透析液圧のみを扱っているので、簡単になるのは当然だと思います。グラフでは膜全体が均一であるという仮定に計算しているので圧損が直線で表現されています。また、膜が不均一だとしても5000本〜10000本の糸を束ねているわけですから全体では平均化すると思います。しかし、そんな簡単なことで本当に計算できるのかといえば、問題ないとは言い切れません。それは実験やその他の計算による確認、立証等が一つも行われていないからです。

4.この計算にとって一番大切なのは本文の一番最初のグラフです。非除水のとき液圧と透析圧の座標は膜を基準(0点)としたときに必ず基準線を中心に相対する座標に描かれなければいけません。この圧は基準線より上が濾過圧、下が逆濾過圧として描かれていますが、血液圧はポンプで加圧しながら膜に流しているため必ず濾過圧になります。除水コントローラで管理されている液圧は必ず(血液圧+コロイド浸透圧+α)に拮抗する圧になります。従って、濾過圧と逆濾過圧の平均値は等しく向きは反対になります。