セル・ウォッシュ

   ホーム 上へ 中分子量 各臓器のアルミ濃度 セル・ウォッシュ 次亜塩素活性水による透析間洗浄の可能性 拡 散 PS膜導入 食事指導 食事指導2 破損しにくい鉗子の制作 破損しにくい鉗子の制作と強度試験

簡単に出来る高Na透析(Cell−Wash)

大貫順一 近藤清隆 住永雅司

 透析困難症の要因として、細胞内溢水及び循環血漿量の減少が考えられる。

 血漿浸透圧の上昇高価を目的として、Na、グリセオール、マンニトールなどが使用されている。また、近年の透析膜の進歩により、透水性能の大きな膜を利用したHemofiltration、Hemodiafiltration、高Na透析等が応用されている。 

 今回、我々は浸透圧効果が高く、取り扱い易いという点から高Na透析を取り上げた。

次に高Na透析の課題を示す。

 1.透析液Na濃度の選択と時間及び、これに伴う血清Na濃度の推移

 2.透析液にNaClを加える方法及び、10%(14%)NaCl静注法での精度とその技術的問題点

 3.除水速度と補液速度の関係と、これのパターン化

これらの課題について検討を試みた。その結果、比較的簡単に且つ安定した高Na透析及びCell Wash Dialysisが行えたので報告する。

 

 

方法と対策

 個人用透析装置(DWS4235)の給水ラインに透析液(セントラルサプライ・バイカーボ)を接続し、透析原液ラインに12%NaCl(Na200mEq/l)、9%(Na180mEq/l)、6%(Na165mEq/l)、2%(Na145mEq/l)、0%(Na130mEq/l)のNaCl溶液を目標Na濃度により接続する。図−1はそのフローダイアグラムである。

 装置内の電導時計は、上限を200mEq/lに下限を130mEq/lに設定する。また装置の希釈比は33倍とした。

 

患者プロフィール

○川○○朗   62才  男  無職

原病歴
  昭和46年     高血圧
     52年1月  下肢浮腫  呼吸困難
             高血圧(BP210/110)
         7月  慢性腎炎と診断
         9月  顔面浮腫  下痢
              某病院へ入院
              尿毒症宇土診断
        10月  腹膜灌流
        12月  血液透析開始   BuN   111.4
                        Cr       8.8
                        BP   170/90
     53年7月  当院へ転院
現症(昭和55年1月)
             身長  150.5cm
             体重(Dry Weight)  48.0kg
             体重増加(1回)  2.0kg〜3.0kg
             心音  心尖部収縮期雑音
             腹水  軽度あり
             透析  4時間×3回/週 
             自己栄養、水分管理不足

 症例1は62才男性で、S55年に東京透析懇談会で報告したように種々の昇圧剤にて血圧をコントロールしたが、その昇圧剤にも反応しなくなり、スライドのごとくカルニゲンと高Naとの組み合わせを試みたが、それでも血圧コントロールが出来なくなり、本格的なcell wash dialysisを試みることになった。結果、1.2.のパターンではカルニゲンと高Naとの併用でも血圧コントロールが困難であったが、3.4.のパターンのcell wash dialysisを施行すると終了時の血清Naも138〜140mEqとなり、口喝感も残らず血圧も安定した。3.と4.を比較すると4.の方法に於いてコントロールが良いことが分かる。従ってcell wash dialysisを施行するには最初のNa濃度は200mEq/lで50分の設定が効果的と思われた。これ以下のNa濃度では後半の血圧維持が困難であった。この症例の場合は4.のパターンで4ヶ月治療の後、通常の透析で血圧コントロールが可能になった。

 上図の如くPattern1は透析液Na濃度160mEq/lで90分、145mEq/lで90分140mEq/lで120分と段階的に下げてゆく方式、Pattern2からは高Na透析液と低Na透析液をスウィッチバックする、いわゆるcell wash dialysisでの各パターンを示す。

 pattern2は180mEq/l、140mEq/l、130mEq/lとの組合わせで、透析5時間目(終了時)の血清Naは145mEq/lと高めで口渇感が残った。1.5〜2.0時間目に血圧低下が見られ、カルニゲン1.5Aの点滴をしている。

 pattern3は190mEq/l、180mEq/l、140mEq/l、130mEq/lとの組み合わせで血清Naは143mEq/lとやや低下したが、口渇感は残った。4時間目以降に血圧低下が見られるが、補液にて維持した。

 pattern4はNa200mEq/l、Na165mEq/l、Na140mEq/l、Na130mEq/lの組み合わせで、透析終了時の血清Naは138〜140mEq/lで口渇感はなく、血圧も安定している。最初のNa濃度と時間との問題についてはNa濃度200mEq/lでは除水を多くしても血圧の低下はなく、後半も安定した透析が行えた。時間は60分と50分の選択であるが、50分を越えるとNa180、190、200mEq/lの何れの選択でも口渇感が強くなった。この患者はpattern4のcell wash dialysisを4ヶ月施行後、通常のアセテート透析にて順調にコントロールできた。なお、ダイアライザーはホルツェンバインのhigh fluxタイプを使用した。

 

 症例2は56才女性で、大腿骨骨頭骨折による2ヶ月の入院後、外来透析での血圧維持が困難となり(図の一番左)、重炭酸透析に切り換える事により血圧コントロールは比較的容易になったが、ドライウェイトまでの除水は困難であったため(左から2番目)、やむなくcell wash dialysisを試みることになった(右から2番目)。ダイアライザーはクラレKF-101を使用し、Na濃度200mEq/lで50分は除水のみを行い、Na濃度130mEq/lに低下した時点で40分間除水を止めて補液を1,000〜1,500ml/hをした。以後30分間隔で高Na時に除水、低Na時に補液を繰り返す。

 結果血圧維持が容易で多少の口渇感はあったが終了時には消失した。血清Naは140±2mEq/lとなり、透析間のNa上昇もなく、ドライウェイトまでの除水が可能となった。4ヶ月のセルウォッシュの後は通常の重炭酸透析(一番右)で血圧コントロールが可能となった。

 両症例とも約4ヶ月のcell wash dialysisを経過後、通常透析に復帰出来るようになったが、これは細胞自体の透過性が正常に戻るからであるとの仮説がある。

 

 

まとめ

1.cell wash dialysis・高Na透析はセントラルサプライ・システムと個人用透析装置の組み合わせで簡単に安定した透析が行える。

 

2.症例は2例のみであるが、cell wash dialysisの透析困難症への適応により、安定した透析が行え、更に何ヶ月か後には通常透析でコントロール可能になった。

 

3.症例によりcell wash dialysisに於ける透析液Na濃度の検討が必要と思われるが、今回は始めのNa濃度を200mEq/lで50分施行し、低Naに切り替える方法で最も良い結果が得られた。今後、Na濃度及び切り替え時間の検討を更に加えたい。