セル・ウォッシュHDF

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セルウォッシュ型HDF

 今までのHDF評価は一般的にβ2-MG除去率を使用していましたが、その除去率は治療法や治療時間を変えても大きな改善はみられません。しかし、透析前の血清β2-MG濃度が高くなるにつれ、β2-MG除去率は上がる傾向にあります。透析開始1時間で血清β2-MG濃度はほぼ透析後の血清β2-MG濃度にまで達してしまい、血清β2-MG濃度は透析開始時の70%前後まで下がると殆ど下がらなくなってしまいます。しかし、時間毎のβ2-MGクリアランスを計算すると透析後半になってもあまり変化はなく、除去はしているが濃度が下がらない状態が続きます。
 血清β2-MG濃度の変化よりβ2-MG除去量を計算しますと、その値は血清β2-MGの総量を上回ります。これはβ2-MGが血漿以外から血漿中へ移動するためと思われます。この移動速度が速くなれば高いクリアランスにより除去量は増加すると思われます。
 β2-MGが血漿以外の体液中に存在し、それが透析により生じる濃度差により移動すると仮定するならば、体液を積極的に血管内外に移動することにより、β2-MGの移動も迅速に行われると思われます。
 体液の移動に最も効果的と思われる方法とし、浸透圧の変化があげられます。高Na透析液と低Na透析液を切り替えながら、高Na時に除水、低Na時に輸液を施行し、血管内外の移動を促進させる、効果的なβ2-MG除去法を考案しました。







 上図は血清β2-MG総量とHDFによるβ2-MG除去量を計算により求め、グラフにしたものです。赤のラインが血清β2-MG総量の計算値で、緑のラインがβ2-MG除去量の計算値です。青のラインは単位時間当たりのβ2-MG除去量です。
 透析開始約1時間で透析開始時の血清β2-MG量に相当するβ2-MGを除去しています。透析終了時のβ2-MG除去量は透析開始時の血清β2-MG量の約4倍に達します。従って、血清β2-MGの除去とともに血清以外から血漿中に移動していると思われ、しかもその量は血漿中のβ2-MGの数倍になります。
 図は血清β2-MGの変化とβ2-MGクリアランスです。青のラインが血清β2-MGで赤がβ2-MGクリアランスです。上のグラフがβ2-MG吸着カラム使用例で、下はPS膜使用透析のグラフです。

β2-MG吸着カラムでは初期のクリアランスが高く、血清β2-MGも急速に低下します。β2-MGクリアランスも透析時間の経過とともに低下してます。
 





 PS膜使用透析では透析開始時から終了時まで、β2-MGクリアランスはほぼ一定です。血清β2-MGの低下もβ2-MG吸着カラム使用例と比較しますと、なだらかな下降曲線を描いています。





 β2-MGクリアランスが一定ならば、血清β2-MG濃度が高いほどβ2-MG除去量は多くなります。




 下図はダイアラアイザーAV側のβ2-MG濃度です。青のラインがA側、赤がV側です。左上のグラフがβ2-MG吸着カラム使用例で、残り3例がPS膜使用透析です。


 β2-MG吸着カラムを使用するとA側データに関係なくV側データは一定です。PS膜使用透析ではクリアランスがほぼ一定で、V側データはA側データの低下とともに低下します。しかし、いずれの治療法においてもβ2-MG除去率は同等です。




 このデータからするとβ2-MG吸着が1番能力が高く見えますが、β2-MGの総除去量は透析前の血清β2-MG値が高いほど多くなります。また、いずれの治療法においても治療開始1時間で血清β2-MGは50%以下になっています。従って、高いクリアランスを維持しても血清β2-MG濃度が低下してしまうため、総除去量の増加はあまり望めません。
 血漿以外からのβ2-MGの移動が存在すると仮定するならば、何らかの方法で移動速度を上げることにより、β2-MG除去量の増加が期待できます。




透析開始から次回透析までの血清β2-MGの変化

 透析前後のβ2-MG除去率は57%です。透析終了時から1時間で血清β2-MGは38%上昇し、その後24時間まで、上昇カーブは緩やかになりながら上昇しています。透析終了時から約1時間で細胞外液に存在する高濃度のβ2-MGが血漿内に移動し、その後、徐々に細胞内液からの移動により、体内の濃度差が無くなるものと思われます。

 血清β2-MGはHD終了時1時間目までに急速に上昇し、その後24時間目まで速度を落としながら上昇します。それ以後は上昇はするものの、その速度は非常に遅くなります。速度の低下した24時間以後のβ2-MG上昇が体内産生によるもので、それ以前の急速な上昇はβ2-MGの移動による上昇と思われます。HD終了直後の急上昇は血管外細胞外液からの移動、それ以後が細胞内液からの移動と思われます。HD後24時間以後のβ2-MG上昇ラインをHD終了時まで延ばし、そのβ2-MG濃度がリバウンドを除いた真のβ2-MG除去率と推測されます。

この値からのβ2-MG除去率は
  1 - ( 24.5 ÷ 30 ) = 0.18 = 18%

この症例の体内のβ2-MG総量を予測してみます。
HDによるβ2-MG除去量値      120mg
HD前の血清β2-MG量    56mg
推測される真のβ2-MG除去率    18%
120mg除去後の除去率が18%なので体液中の総量は
  120 ÷ 0.18 = 667mg
また、体液量に血清β2-MG濃度を積算し、体液中のβ2-MG総量を計算する。
  30 × 22800 = 684000μg
          = 684mg
どちらの計算法においてもほぼ等しい値が得られます。
血漿と体液のβ2-MG量を比較します。
  56 : 667 = 1 : 11.9
これは血漿の細胞外液に対する比率(1:12)に非常に近い値です。
HD終了後24時間以後の緩やかな上昇が体内産生によると仮定し、β2-MGの1日産生量を計算します。
24時間でのβ2-MG上昇は2μg/ml、体液量は38kgの60%、22800ml
  2 × 22800 = 45600μg
         = 45.6mg
この値はβ2-MGの1日産生量約30mgを上回る値になります。β2-MG産生量が増加しているか、体液濃度が下がったための溶出かと思われます。


体液区分とその構成

 

全体水分量に 対する%

理想体重に対 する%

60kg体重の成人での実際の量(l)

全体水分量(TBW) 

 

60 

36

細胞内液(ICF)

70

42

25 

細胞外液(ISF) 

30

18 

11 

細胞間液(TCF)

(17)

(10.5)

(6.3)

細胞通過液(TCF) 

(6) 

(3.5)

(2.1)

血漿(Ht=45%)

(7)

(4.0)

(2.3)

血漿(Ht=30%)

(9)

(5.0) 

(3)

体内の体液移動
 一般的に血漿水の交換は1分以内に行われが、全体水分中に分布するまでに2時間近くを要する。β2-MG測定値においてもHD後1〜2時間後まで急速に血清β2-MGは上昇するが、その後は緩やかで一定の上昇に変わります。

体液移動と血液浄化
 血液浄化療法において細胞外液の浄化は速やかに行われるが、細胞内液の浄化には細胞外液の時以上に時間を要する。従って、細胞内液を積極的に細胞外へ移動させ、浄化した後、再度細胞内へ戻すことにより細胞内液の浄化速度が上昇すると思われる。

浸透圧と体液移動
 浸透圧を上昇させるために用いられる輸液の代表として、アルブミン製剤、デキストラン、グリセオール、ブドウ糖液、NaCl液等がある。アルブミン、デキストラン等のコロイド液は血管内から移動しないため、血漿量の維持には効果的だが、血管外の浸透圧に影響を与えないため、細胞内液の移動には余り関与しない。グリセオール、ブドウ糖液は細胞内への移動と短時間での代謝により高浸透圧を維持できない。Naは短時間で血管外に移動してしまうが、Na−Kポンプの働きにより、細胞内外の浸透圧差を維持し、細胞内から外への体液移動を促進する。
セルウォッシュ型HDFの施行法


 透析液のNaを調整するため、透析液供給側に3%NaCl液および水を低
流量ポンプを使用して添加します。

   

 

Na濃度(mEq/l)

添加液

添加速度(ml/min) 

120

60

127

水 

40

132 

20

140

なし

 

160 

3%NaCl 

20

180

3%NaCl 

50

200

3%NaCl 

70


セルウォッシュ型HDFのテクニック
準備  透析原液ポリタンク×2  サブラッドB×使用量  低流量ポンプ×1   細経ローリングチューブ×1
 1.ポリタンクの1つに水を、1つに3%NaCl液を10lづつ作る。
 2.低流量ポンプに細経ローリングチューブを付け、吸い込み口を3%NaCl液に   入れ、出口側を透析液供給側に接続する。
3.透析を開始したら、低流量ポンプを60ml/minで作動させ、タイマーを   30分にセットする。
 4.除水設定をする。速度は通常設定値の約2倍。
   *血圧とTPを測定し、除水速度を調整する。TP測定による濃縮度    は10%以内にする。
 5.タイマーが30分経過したら3%NaCl液を水に切り替え、低流量ポンプを   60ml/minで作動させ、タイマーを30分にセットする。
 6.除水を止め、輸液を開始する。
   *血圧とTPを測定し、輸液速度を調整する。TP測定による希釈度    は10%以内にする。
7.タイマーが30分経過したら3〜4を繰り返す。
 8.タイマーが30分経過したら5〜6を繰り返す
9.タイマーが30分経過したら水を3%NaCl液に切り替え、低流量ポンプを   40ml/minで作動させ、タイマーを30分にセットする。
10.除水設定をする。速度は通常設定値の約1.5倍。
   *血圧とTPを測定し、除水速度を調整する。TP測定による濃縮度    は10%以内にする。
11.タイマーが30分経過したら3%NaCl液を水に切り替え、低流量ポンプを   40ml/minで作動させ、タイマーを30分にセットする。
12.除水を止め、輸液を開始する。
   *血圧とTPを測定し、輸液速度を調整する。TP測定による希釈度    は10%以内にする。

13.タイマーが30分経過したら3%NaCl液を水に切り替え、低流量ポンプを   30ml/minで作動させ、透析終了時まで続行する。
14.除水速度を通常の1/2にセットする。
*血圧低下がある場合は輸液する。








 上図は透析液Naをセルウォッシュの透析液Na濃度による血清Naの変動と除水、輸液量のシミュレーションです。矩形のラインが透析液Na濃度です。




効果判定
1.β2-MGクリアランスがHDFと同等を維持し、HD中の血清β2-MG低下が緩やかになる。
*細胞内のβ2-MGが細胞外に移動すると、血清β2-MG速度は低下すると思われる。
2.HD終了後1時間値のリバウンドが少なくなる。
  *細胞内のβ2-MGが効果的に除去できれば、HD終了後、体液濃度が一定になった時点でも細胞外への移動量は少なくなると思われる。
3.HD前のβ2-MG値の低下
  *血清β2-MGのHD後1時間値が低下すると、次回HDまでのβ2-MG上昇値が同等であればβ2-MGのHD前値は低下する。

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