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長期透析例における血中および各臓器内アルミニウム濃度の検討

今回、我々は多発性嚢胞性疾患のため、生前13年間の人工透析を施行され、その経過中に下腿の骨痛と高Al血症を呈した症例において、冒険にて各臓器中のAlを測定・検討する機会を得たので、若干の文献的考察を加えて報告します。

 

症例  55才  男性

主訴:腹痛、腹部膨満

家族歴:母と兄に多発性嚢胞腎がある

現病歴:昭和45年多発性嚢胞腎を発見された。

     昭和49年腎機能低下のため血液透析を導入さる。

     昭和56年頃より膝関節、肩関節などに骨痛出現。

     昭和61年DFOテストにて血清アルミニウムの上昇を認めたので
           DFOによるアルミ除去治療を開始。骨痛は改善。

     昭和61年9月腹痛、腹部膨満増強のため、入院。

     昭和61年10月全身状態悪化し死亡。

 

確認されたアルミゲル服用量

昭和54年2月より昭和61年10月まで 5650.5g(7年8ヶ月)

 

症例は55才男性、主訴は腹痛及び腹部膨満であります。家族歴では、母と兄に多発性嚢胞腎があります。

現病歴は、昭和45年に多発性嚢胞人を指摘される。

昭和49年腎機能悪化のため近医にて血液透析を導入。

昭和56年頃より膝関節、肩関節などに骨痛が出現。

昭和61年骨痛が全身へと広がったため、カルチトニン治療を施行したが効果はなく、Alによる骨痛を疑いDFOテストを行った結果、血清Al濃度の上昇が認められたため、DFOによる治療を開始したところ骨痛が改善した。

昭和61年9月、腹痛、腹部膨満の訴えにて帝京大学に入院となる。

同年10月、全身状態悪化のため死亡す。

アルミゲルの生前の使用量は確認されただけで、昭和54年2月より昭和61年10月までの7年8ヶ月間で、

総量5650gと推定されました。

 

入院時身体所見

身長 156.2cm、体重 58.2kg、体温 36.8、血圧 164/74、脈拍 66/分、意識清明、リンパ節腫脹(−)

眼球結膜:黄染(−)

眼瞼結膜:貧血(+)

頸部・胸部:異常所見(−)

腹部:肝腫大著明(図の斜線部)

四肢:浮腫軽度(+)

神経学的異常所見(−)

 

入院時身体所見。身長156.2cm、体重58.2kg、体温36.8、血圧164/74、脈拍66整、意識清明、全身のリンパ腫脹は認められませんでした。眼球結膜の黄染は認められなkったが、眼瞼結膜は貧血を呈していた。警部及び胸部に異常所見は認められず、腹部には、斜線で示すごとく著明な肝腫大が認められました。四肢には浮腫が軽度認められ、全身の神経学的異常所見は認められませんでした。

 

入院時検査所見。血沈1時間値 33mm、RBC 286万、WBC 8300、(分画正常)、Hb 8.5g/dl、Ht 26.4%、Plt 18.3万。

生化学、TP 6.1g/dl、Alb 2.3g/dl、GOT 46(IU)、GPT 38(IU)、LDH 291(IU)、Al−P 803(IU)、γ−GTP 344(U)、Ch−E 2.41(mIU)、LAP 91(IU)、BuN 69.8mg/dl、Cr 9.5mg/dl、UA 8.0mg/dl、Na 143mEq/l、K 4.0mEq/l、Cl 105mEq/l、Ca 5.2mEq/l、IP 4.3mg/dl、Mg 3.1mg/dl、Bs 124mg/dl、CRP (6+)、Ferritin 209.5ng/mlでした。

DFO投与前のX−P所見では、後頸骨動脈に石灰化を認める以外には、著変はありませんでした。 

 

表は、本例のDFO投与期間を含む、死亡前1年4ヶ月間のデータを示します。昭和61年4月29日より週1回500mg(週末)のDFO投与を開始したところ、血清Al濃度は、1度上昇した後に漸減し、骨痛も徐々に改善され7月始には消失しました。しかし、その後再び骨痛が出現したため、各臓器や骨のAlをより多く除去するため、DFOの投与量を週3回500mgづつ計1500mgに増量しました。その結果、表のようにAlの除去量も増大したものと考えられ、骨痛も消失しました。

1972年Alfreyにより、透析患者のAl蓄積の問題が提起されてから、その毒性が注目されるようになってきた。Alの除去法として、1980年にAcrillらは、DFO(メシル酸デフェロキサミン)投与により血中に放出されたDFO−Alの除去を提唱してきた。その後多くの施設で追試され、有効性が確認されている。我々の施設でも、すでに本例を含め5例の骨痛を訴える患者に対して、DFO投与によるDFO−Alの除去により症状の改善が認められています。

しかしながら、本症例ではDFO−Alの除去により骨痛が改善されたにも拘わらず、解剖所見によりかなりの量のAlが各臓器に残存しておりました。

 

表は各臓器中のAl濃度を示します。測定は、Flameless Atomic Absorption Spectrophotometryにて行いました。

結果、乾燥重量1gあたり、腸 62μg、心臓 66μg、脾臓 176μg、膵臓 74μg、胃 54μg、肺 113μg、肝臓 94μg、腎臓 62μg、脊椎骨 360μg、大脳灰白質 25μg、大脳白質 47μg、小脳灰白質 9μg、小脳白質 7μg、と正常値を上回るAlが計測され、特に骨では最高で664μgにも達していました。なを、脊椎骨はOsteopotic changeが認められています。

本例におけるAl蓄積の原因は、腎不全によるAl排泄能の低下に加えて、長期に渡るアルミゲルの服用によるものと考えられます。

現在、長期透析例において、Al蓄積による各種臓器障害が問題となっているが、本例のごとく、DFO投与によって骨症状が改善されたにも拘わらず、全身の臓器内に多量のAl蓄積が確認されました。

これは、DFO等の薬物投与を含めた長期透析例の管理上、多くの問題を示唆するものと考えられたため、症例の呈示をいたしました。本例におけるAl濃度測定は帝京大学薬学部裁判科学教室の磯野先生にお願いしました。

 

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